岩手の春の蛾(三陸・北上山地)

春に、岩手県の三陸・北上山地で見かける蛾を紹介します。標高帯によって、低地・山地・高所と分けました。個人的に「春に三陸・北上山地で出会う頻度」を★(多い)~★★★(少ない)でランク付けしました。★★★には少し珍しいものから数十年ぶりに記録が得られたものまで、かなりの格差がありますし、昼行性のため灯火では出会いにくいといったものも含まれます。調査場所が偏っていたり、年による差もありますのであくまで目安です。

低地:海岸線から標高400 m程度まで。アカマツ林や各種広葉樹林。アカマツ、ケヤキ、コナラ、ヤマハンノキなどの他、ミズナラ、シナノキ、ミズメ、エゾイタヤ、ハリギリなどの樹木が普通にみられる。常緑広葉樹はほぼないが、半島先端の海岸線ではタブノキが生えることがあり、人里によく植えられているツバキから発生する蛾もいます。

山地:標高400~800 m程度.広葉樹林が多く、ミズナラやハルニレ、シナノキなどの密度が高まる。東北というと延々と続くブナ林のイメージがあるかもしれませんが、沿岸部・北上山地ではブナ林はやや局所的です。ダケカンバはまだ現れないかときに単木的に現れる。早池峰周辺ではヒノキアスナロ林もある。北上山地北部では所によりシラカンバ林。カラマツの植林も多いが、本来の分布域ではないのでカラマツ食の蛾はほぼ見られない。

高所:標高800~1,200 m程度。ダケカンバやシナノキ、ヤナギ類、ナナカマドなどの広葉樹林が多い。中腹ならブナ林も。高原ではシラカンバも生える。標高1,100 mを超えると、早池峰・五葉山周辺ではコメツガやオオシラビソ、ヒノキアスナロなど亜高山性の針葉樹が出現するが、他の山域ではほぼ見られない。亜高山性針葉樹を寄主とする蛾は少ないことが特徴です。

*注意:写真には、他の地域・季節(夏型や越冬前)に撮影したものも含まれます.

早春の蛾(3月下旬~4月上旬)
春というよりはまだ晩冬といったほうが良いかもしれない季節.特に出現が早い一部の蛾と越冬種ぐらいしか見られません.関東近辺では,2月下旬~3月前半頃に発生するような蛾たちも,岩手では3月後半まで現れません.

シロフフユエダシャク
Agriopis dira


トビモンオオエダシャク
Biston robustus robustus


チャオビトビモンエダシャク
Biston strataria hasegawai

★★★

ホソウスバフユシャク
Inurois tenuis


シモフリトゲエダシャク
Phigalia sinuosaria


フタマタフユエダシャク
Larerannis filipjevi

★★

ホソバキリガ
Anorthoa angustipennis


エゾモクメキリガ
Brachionycha nubeculosa jezoensis


カタハリキリガ
Lithophane rosinae

★★

ハガタキリバ
Scoliopteryx libatrix

★★

エグリキリガ
Teratoglaea pacifica

★★★

ウスアオキリガ
Lithophane venusta

★★

イイジマキリガ
Orthosia ijimai

★★

春の蛾(4月中旬~下旬)
木の葉が芽吹きよりも前の季節に発生する蛾たちです.
ノヒラトビモンシャチホコ
Drymonia basalis

★★

トギレフユエダシャク
Protalcis concinnata

★★

ウスバキエダシャク
Pseuderannis lomozemia


ウスバシロエダシャク
Pseuderannis amplipennis


モンキキナミシャク
Idiotephria amelia


ナカモンキキナミシャク
Idiotephria evanescens


ギフウスキナミシャク
Idiotephria debilitata

★★★

ウスベニキリガ
Orthosia cedermarki

★★

マツキリガ
Panolis japonica


スギタニキリガ
Perigrapha hoenei


ハイイロリンガ
Gabala argentata

★★

キバネトビスジエダシャク
Myrioblephara cilicornaria

★★

アトジロエダシャク
Pachyligia dolosa


クロフシロナミシャク
Otoplecta frigida

★★★

晩春の蛾(4月下旬~5月上旬)
桜や若葉の緑が競演し,森が最も美しくなる時期に現れる蛾たちです.

イボタガ
Brahmaea japonica


エゾヨツメ
Aglia japonica


オナガミズアオ
Actias gnoma gnoma


オオミズアオ
Actias aliena


ルリモンエダシャク
Cleora insolita


ウスベニトガリバ
Monothyatira pryeri

★★

ホシボシトガリバ
Demopsestis punctigera

★★

マユミトガリバ
Neoploca arctipennis


ヤスジシャチホコ
Epodonta lineata


ユミモンシャチホコ
Ellida arcuata


オオアオシャチホコ
Syntypistis cyanea cyanea


アカスジアオリンガ
Pseudoips sylpha

★★★

アオスジアオリンガ
Pseudoips prasinanus


キノカワガ
Blenina senex


アマヒトリ
Phragmatobia amurensis japonica

★★

ハルタウスクモエダシャク
Menophra harutai

★★

キンイロキリガ
Clavipalpula aurariae


シロホシエダシャク
Arichanna albomacularia

★★

カギモンヤガ
Cerastis pallescens

★★

キジマエダシャク
Arichanna tetrica tetrica

★★

ナマリキリガ
Orthosia satoi

★★★

ブナアオシャチホコ
Syntypistis punctatella


山地の早春の蛾(4月下旬~5月上旬)
少し標高を上げなければ見られない春の蛾たち。三陸の海岸線では見たことがないが、北上高地の標高300~800 mくらいに生息する蛾たちを紹介。

シロモンアカガネヨトウ
Valeria dilutiapicata splendida

★★★

ゴマフキリガ
Orthosia coniortota

★★

アオヤマキリガ
Orthosia aoyamensis

★★

ヒメカレハ
Phyllodesma japonicus japonicus

★★

キバラヒトリ
Epatolmis caesarea japonica

★★

亜高山の早春の蛾(4月下旬~5月中旬)
標高800 m以上のダケカンバ帯・亜高山帯針葉樹林や、雪が遅くまで残るブナ帯の春の蛾を紹介します。多雪地では出現が6~7月頃になることもあります。

シーベルスシャチホコ
Odontosia sieversii japonibia

★★

キボシミスジトガリバ
Achlya longipennis longipennis

★★

タマヌキトガリバ
Neodaruma tamanukii

★★★

カバイロミツボシキリガ(越冬前個体)
Neodaruma tamanukii

★★★

ミヤマカバキリガ
Orthosia incerta incognita

★★


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