三陸~北上高地の秋の蛾

初秋の蛾
 三陸ではお盆を過ぎると一気に涼しくなり,8月下旬~9月中旬頃までを初秋といってよい気候であると考えています.比較的温暖な気候で活動する種も多いので,初秋の後半で冷え込んだ日には,深秋よりも蛾の集まりが悪い日があります.まだ夏との共通種も多いですが,特にこの時期に限って出現する種や夏眠を終えて活発になる種を紹介します.灯火には蛾類の他にキリギリス・ササキリなどの直翅類や赤とんぼ類もよく集まります.

シロスジカラスヨトウ
他のカラスヨトウは初夏に発生して越夏するが,本種だけは晩夏に発生する.
ヒトリガ
代表的な初秋の大型蛾.人目につくようで,よく名前を聞かれる.
クロビロードヨトウ
良好な草原に生息する.ツリガネニンジンの花などを訪れる.
モンクロシャチホコ
夏にも出るが,初秋に多い.
ヒメナカウスエダシャク
8月下旬の亜高山~高山では大量に見られる.
ムラサキシタバ
8月上旬頃から発生し,8月下旬頃よりライトによく飛来する.やや高所にみられる.

深秋の蛾
 9月中旬~10月中旬頃の深秋に出現する蛾たちは,非常に色とりどりで楽しい.初秋シーズンの終わり頃よりも個体数・多様性ともに高くなります.いわゆる冬夜蛾(キリガ)のうち秋キリガと呼ばれるものが発生する時期です.

ケンモンミドリキリガ
ミントグリーンの美しい蛾.私が最も好きな蛾の一つ.
エゾキイロキリガ
亜高山では9月上旬頃から出現する.
ツチイロキリガ
中部地方と東北地方の深山にしか分布しない珍しい蛾.
ハイイロハガタヨトウ
ハルニレ食いで少し珍しい.
マエモンオオナミシャク
初夏に羽化し,洞窟で越夏.深秋に活動する.

晩秋の蛾
 紅葉の最盛期頃~葉が枯れ落ちるまでの時期を晩秋と考えています.高所では10月中旬,海岸付近では11月中旬頃から晩秋といえる時期となります.氷点下まで気温が下がる日も多い中,冷えにくい曇りの日を狙って蛾を探しに行きます.深秋の彩りも失われ,一気に顔ぶれが寂しくはなってきます.

アキナミシャク
ダケカンバ帯に生息する.

初冬の蛾
11月中~下旬には木々の葉もほぼ落ちて,夜の森には生き物の気配がないように思えます.しかし,こんな季節でもフユシャクの仲間が多く活動しています.この仲間はオスにしか翅がなく,メスはコロッとしたアザラシみたいな形をしています.少し暖かい日には越冬キリガという成虫で冬を越すヤガの仲間も見られます.クシヒゲシャチホコやウスズミカレハは越冬せず,メスにも翅がある普通の蛾ですが,冬仕様なのか非常にモフモフとしており,”冬ボンビ”と称される蛾の一つです.初冬に該当する時期は,高所では11月上~中旬頃から,沿岸部の低地では冷えが遅く12月頃となります.

ユキムカエフユシャク
ハンノキ林の蛾であるため局所的.ヤマハンノキからも発生するようだ.