回顧録(2018)

出会いの中でも個人的に思い出深いものを集めています.
必ずしも珍種に限らず,興味のきっかけとなったものや,思いがけない出会いなどが中心です.

ニホンカモシカ(2018年4月)

 岩手に移って1週間も経たない頃,4月も半ばになって研究所周りではもう木の若葉も出始めて春が始まっていました.ふと残雪が見たくなって,平日の昼間ですが一番近い峠にドライブへ行きました.一通り山地の早春の風景を見た後,下り道で道そばの崖にへばりついているカモシカの幼獣を見つけました.驚いたのか,草をくわえたままこちらを見ていました.

キクザキイチゲの咲く春の山(2018年4月)

 岩手に移って最初に遠出したのは4月下旬の種差海岸と田沢湖でした.新しい種を見れたわけでもなく,決して良い成果のフィールドだったわけでもないのですが,全てが初めて行く場所で,今でもあのときの何とも言えないわくわく感を思い出します.
 写真は,田沢湖より少し上った田沢湖スキー場付近の林にて,キクザキイチゲが陽気を浴びて咲いている風景を撮影したものです.春植物のお花畑って何か不思議な力があって,珍品が見れずともこの景色が見れただけで満足してしまうんですよね.初夏にもなってしまうと何か一つでも珍しいものに出会わなければ満足できなくなってしまうのですが,早春のこの時期だけは純粋に自然を楽しめている気がします.

ギョウジャニンニク
(2018年5月,岩手県宮古市)

岩手に移ってから,毎週のように山菜を取りに行っていましたが,ギョウジャニンニクだけはなかなかある場所を見つけられていませんでした.別の植物を目的に向かった宮古市の山中でやっと見つけられました.あまり認知されていないのか他に取っている人もいないようで,たくさん採取できました.食卓が潤いました.

トガクシソウ(2018年6月)

 岩手に移ってすぐ,今年の最大目標をこの植物に決めて情報収集を始めました.何か所も候補を用意していたのですが,呆気なく1か所目で見つけることができました.ブナ帯上部の急斜面に生えるという,噂通りの環境の場所でした.何年も憧れていた植物に会えてしばし見とれていました.
 次の日も山に登ろうと考えていたのですが,何だか燃え尽きてしまって登山口周辺まで行って朝起き上がることができませんでした.

オオウメガサソウ
 トガクシソウを見た後は,次の目標が本種でした.茨城県で簡単に見れることは知っていたのですが,みんな見ている場所で見るのはちょっとくやしいものがあります.下北半島に本種の生育情報を見つけていってみると,大群生に出会うことができました.
 この頃から距離感がおかしくなり,前日から外灯めぐりをしつつ八戸まで行き,種差と仏沼にも寄り,その日のうちに大間と薬研を通って,夜には八甲田で蛾を見て早朝までに秋田駒の登山口に行って登山するなんていう頭のおかしい旅程を組んでしまったのでした.

クルマバハグマ
(2018年10月,秋田県仙北市)

 秋田県にキノコ探しに行くと,ずっと気になっていたクルマバハグマに出会えた.キヌガサソウを彷彿とさせる輪生状の葉が面白い.

ブナシメジ
(2018年10月,青森県八甲田)

 ブナシメジといえばスーパーにも売っているので誰でも知っているキノコですが,その野生品を見たことがある人は少ないのではないでしょうか.名前の通りブナ林にあり,倒木から生えるのですがごく稀で中々見ることができない珍種です.紅葉を見にやってきた八甲田山麓の一般向けの散策道で,運よく出会うことができました.