●分布:関東、九州地方の氾濫原
●花期:5~6月
河川敷の氾濫原の葦原に生えるという変わったスミレの仲間.花だけ見るとシロスミレに似ている普通のスミレだが,背の高いアシ群落の中に生えるので,このスミレは高さ1m以上にもなるというから驚きだ.絶滅危惧IB類に指定されている非常に希少な植物で,関東地方では渡良瀬遊水地や菅生沼など火入れが今も行われている湿地でわずかに生き残っている.
写真のものはとある自生地で出会ったもの.ここでは毎年火入れが行われており,湿地性植物が比較的多く残る貴重なポイントだ.現地に行ってみると,数日前に大雨があったようで(1週間ほど海外出張に行っていたので全然知りませんでした.),多くの草花が泥をかぶっておりこれは発見できないかもな,と少々不安になりながらの散策.ハナムグラ,チョウジソウ,タカアザミ,ミゾコウジュ,マイヅルテンナンショウなどの氾濫原ならではの植物が多く出現するも,目標のタチスミレは見つからない.途中に同じくタチスミレを探索しているおじさんに出会い,情報交換しつつアシ原を1時間ほど探し回ったが出会えず.最後に,以前木陰ながらノウルシが群生する草地があったことを思い出し,最後に覗いてみることにした.行ってみると見事に水没していたが,深さは膝くらいで底もぬかるみはない.膝をまくりじゃぶじゃぶと奥に入っていくと,3本ほどのタチスミレが木漏れ日のスポットライトを浴びて佇んでいた.残念ながら,タチスミレを探していたおじさんは濡れたくないようで,水没した草地の手前で引き返して帰ってしまったようだ.結局出会えたのかしら.
背の高いスミレと聞いていたが,写真のものは腰の高さぐらいであった.これでも普通のスミレと比較すると,破格の高さではある.
▲写真1:2019年5月、茨城県