ブナ
Fagus crenata

●分布:北海道南部~九州
●花期:5~6月

日本の温帯林を代表する落葉高木。日本海側の多雪地ではしばしば純林を作る。北限は北海道の黒松内低地、南限は高隈山地である。展葉と同時に開花するが、残雪期なので見つける機会は少なめ。
多雪地では、雪が解けきるよりも先にブナの葉が開き切り、そのため亜高木が欠落し、林床がよく開けたブナ林が成立する。
東北地方では日本海側や奥羽山地では、低地から普通にみられる樹木である。三陸ではあまり産地が多くないが、自然度の高い峠の近くなどで見かける。北上山地でまとまった数があるのは、思いつく限りは早池峰山と安家森の山麓部ぐらいだろうか。
よく似たイヌブナでは葉の形状が本種よりもやや細長く、側脈は10~14対である。本種では、側脈は7~11対となる。イヌブナには、樹皮にイボ状の皮目が多いことや株立ちしやすいなどの相違がある。また高所や多雪地にはあまり多くない。
多雪地を代表する樹木であり、本種に依存する生物は少なくない。ブナの葉を専食する昆虫にはフジミドリシジミやブナアオシャチホコ、ヒメシロドクガなどがいる。大木になるものが多く、ヤシャビシャクやフガクスズムシなどの樹上植物はブナにつく場合が多い。

▲写真1:2020年5月24日、岩手県花巻市河原坊

▲写真2:2021年5月23日、宮城県大崎市
若葉は透明感のある黄緑色で美しい。

▲写真3:2020年6月28日、秋田駒ヶ岳

▲写真4:2018年10月6日、秋田県森吉山山麓
樹皮は滑らかで白灰色だが、地衣類やコケ類に覆われて模様をなす。

▲写真5:2018年10月16日、青森県八甲田
秋、ブナ林はオレンジ色に燃え上がる。紅葉がどこまでも続く東北地方のブナ林は非常に美しいので、是非見ておきたい。


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